近赤外線のマイナスにもなりうる作用

MENU

近赤外線のマイナスにもなりうる作用

近赤外線の光老化促進作用などマイナスの作用について、船坂ら、Krutmannらがまとめているように、しわ増強、MMP-1誘導などが挙げられるが5,26,28)、我々は以下について、特に強調したい。

 

近赤外線は、水、ヘモグロビンに吸収されるため、近赤外線に曝露されると、生体は血管を拡張させて、深部組織を防御する2)。

 

また、近赤外線は、ミオグロビンにも吸収されるため、長期的に太陽光の強い近赤外線に曝露されると、皮下の筋肉が菲薄化する3)。

 

さらに、これらの影響が長期にわたって持続するため、深層の光老化予防には、紫外線カットだけでなく近赤外線カットも必要である。16,17,19,29)

 

1.血管の長期にわたる拡張作用

強い太陽光に長時間曝露されると、皮膚が赤くなるが、この場合、熱で温まって一時的に赤くなるのと違って、長期に持続する。

 

この近赤外線曝露で血管が拡張するのは、ただ単に熱で血管が拡張するのではなく、血管平滑筋がアポトーシスして、血管が収縮できずに、長期間拡張することも一因と考えられる17)。

 

このことから、我々は、近赤外線こそが、光線過敏症の増悪、第1度酒さ、毛細血管拡張症の原因の一つである可能性もあると考えている17,19)。

 

近赤外線のマイナスにもなりうる作用

 

図6 ラットの皮膚と肉様膜の写真

近赤外線照射で、血管平滑筋がアポトーシスして、血管が拡張することを証明した。
文献17)より引用。SMA: Smooth muscle actin、赤い矢印部は真皮下の血管、黒い矢印部はTUNEL陽性のアポトーシスした血管平滑筋細胞。





2.筋肉の菲薄化

近赤外線は、ミオグロビンにも吸収されるため、筋組織に対しても影響を与える可能性がある。適度に近赤外線を照射した場合、前述のように、ターゲットの筋肉の過剰な収縮を緩和することも可能であるが、日常的に太陽光の強い近赤外線に曝露されると、皮下脂肪組織が少ない部位は、皮下の筋肉が菲薄化し、皮下組織の緊張を維持できずに、たるみの原因となる
近赤外線のマイナスにもなりうる作用
図7 ラットの真皮と肉様膜の写真
近赤外線照射で、筋線維はアポトーシスした。

 

 

3.深部組織に対する作用

近赤外線は紫外線に比べて波長が長く、深部にまで到達でき、さまざまな生理作用を引き起こす。29-31)
普段、近赤外線に曝露されることのない皮膚の薄いラットでの結果であるが、近赤外線照射により、長期にわたって骨髄細胞が減少し、深部組織にまで影響を与えることを報告した。

 

近赤外線の防御機能が低下している場合は、長時間日向で太陽光の強い近赤外線に曝露され続けると、深部組織に対してもダメージを与える可能性があるので、近赤外線をカットすることが大切である。

 

関連記事

近赤外線とは  近赤外線の研究の方法  近赤外線のプラスの作用  近赤外線のクロモフォア

 

近赤外線対策コスメのエビーゼをチェック

 

出典元の論文・著書 田中 洋平(タナカ ヨウヘイ)先生