近赤外線の研究の方法について
1.従来からのin vitroにおける近赤外線の研究4)
従来からの近赤外線の研究では、熱源として、幅広い近赤外線の波長を放射する白熱球、ランプが使用されていました。
近赤外線は、水に吸収されやすいため、照射により、試験管、シャーレ内の培養液表層の温度が上昇し、表層で近赤外線が吸収されてしまい、底面に沈んでいる対象の細胞に近赤外線が十分に届いていませんでした。
そのため、試験管内での基礎的な研究において、熱作用的lな近赤外線の作用は詳細に研究されてきましたが、その他近赤外線の強い生物学的作用を見出せませんでした。
2.従来からのin vivoにおける近赤外線の研究5-7)
生体の実験では、まず、近赤外線がヘモグロビンに吸収されやすいことから、真皮浅層の血管の熱による拡張により、発赤が生じ、その発赤部で近赤外線が吸収されてしまい、皮膚の深層や皮下組織に近赤外線を到達させることができなかった。
また、近赤外線が水に吸収されやすいため、皮膚の表層の水分に近赤外線が吸収され、照射表面の温度が上昇し、それと同時に、痛みが強くなり、充分な出力では照射できなかった。
この痛みに対する対応として、表面を麻酔して照射しても、発赤、水疱を生じてしまい、皮膚の深層や皮下組織に近赤外線を到達させることができなかった。
このため、試験管内での基礎的な研究と同様、生体における研究においても、コラーゲンの産生を促進するなど真皮浅層における熱作用は詳細に研究されてきたが、近赤外線の深部組織に対する他のな強い生物学的作用を見出せなかった。
3.我々の近赤外線の研究
日常生活において、最大の近赤外線の光源である太陽光の波長について調査すると、太陽の表面での波形(図1の灰色の波形)と、地表で曝露されている波形(図1の朱色の波形)が異なることがわかった。
近赤外線は水に吸収されやすいため、太陽から放射される近赤外線は、大気中の水に特に吸収されやすい波長の部分が吸収されて、残りが地表に降り注いでいる。9,10)
従来からの近赤外線の研究で使用されていた熱源の白熱球、ランプは、図1の灰色の波形に近いため、実際に地表で曝露されている近赤外線の生体に対する作用を研究する際には、水に特に吸収されやすい、1400nm付近と1800nm以上の波長域が減衰された波形の近赤外線を照射する光源で実験しないと正確な調査はできない。
図1 太陽光の波長と熱エネルギー
文献3)より引用
そこで、図2の朱色の太線の1100〜1400, 1600〜1800nmにピークをもつ、地表に降り注ぐ太陽光に近い近赤外線を、照射対象表面で吸収されないように表面を冷却しながら照射できる装置で実験することにより、深層まで近赤外線を到達させ、近赤外線のnon-thermalな様々な強い生物学的作用を発見することができた。2,3, 11-19)
図2 実験に用いた近赤外線照射装置の波形
文献3)より引用
図2の朱色の太線が、実験で使用した近赤外線照射装置から照射される波形で、1000nmくらいから1800nmのうち1400から1500nm付近がカットされている。1000nmより波長域が長いため、メラニンにも吸収されにくいことから、有色人種にも使用でき、また色素沈着のある部位にも照射が可能である。
さらに、ヘモグロビンの吸収域(図の朱色点線)の低い波長域なので、発赤や炎症のある部位でも照射可能である。
そして、1400から1500nm付近がカットされているため、皮膚表層で吸収されることも抑えられ、水疱もできず、痛みも少なく、深部にまで近赤外線を到達させることが可能である。8,20)
地表に届く太陽光の近赤外線と実験装置の近赤外線の共通点は、地表に届く太陽光は大気の水蒸気で、実験装置は水フィルターで、1400-1500nmの波長がカットされることと、1100-1800nmの波長形が似ていることであり、相違点は、実験装置は近赤外線のみ照射し、近赤外線以外の光の作用を除外できること、表面を20度に冷やす冷却装置を備えているため、痛みを抑え、深部にまで近赤外線を到達させることができることである。
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