近赤外線のプラスの作用

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近赤外線のプラスの作用

近赤外線は生物学的作用が強いため、波長域や照射条件を工夫すれば、他の光線や治療法では対応が難しい疾患や領域に対しても、有効利用が可能となる。2,11-15, 17-19)

 

近赤外線の有効利用で、代表的なものとして、しわ、たるみの改善効果が挙げられるが、これは、真皮を加熱することで、皮膚を即時に引き締めることができ、コラーゲンの再合成を高めるためとされている。21-25)

 

このしわ、たるみの改善効果の他の有効利用については、過去の文献を船坂らがまとめているように、創傷治癒促進効果や、UVBによる損傷の修復促進作用が挙げられる。6,26,27)

 

 

1.コラーゲンの再合成促進作用

近赤外線照射の熱による皮膚の収縮とコラーゲンの再合成促進作用は、多くの文献で報告され、美容医療において、水分を保持するのに都合の良いコラーゲンを皮膚に蓄えることができ、その結果、はりのある外見に若返らせることがある程度可能である。2,12)

 

日に当たることのない、極めて皮膚の薄いラットでは、非照射対照群は皮膚のコラーゲンの密度はT型、V型ともに低いが、近赤外線照射後は、コラーゲン産生が促進され、T型、V型コラーゲンともに、染色性が高まり合成亢進が示唆された。

 

そして、創傷治癒過程の成熟期に達して、V型コラーゲンは非照射対照群と同様、低いコラーゲン密度に戻るのに対して、T型コラーゲンの密度は高い状態を維持できる。

 

このように、近赤外線照射後のコラーゲンの増加は、長期にわたって維持されるが、瘢痕部のT型、V型コラーゲン染色の所見と比較して、膨化したコラーゲン束の増生ではなく、より繊細な線維束が産生され、より長期に若返り効果を維持できると思われる11,12)。





図3

近赤外線のプラスの作用
T型コラーゲンとV型コラーゲンの染め分けを行ったコラーゲン免疫染色の写真
上の段がT型コラーゲン、下の段がV型コラーゲンで、それぞれのコラーゲンが茶色に染色されている。

 

 

2.エラスチンの産生促進作用

エラスチン(弾性線維)は、肌の弾性を維持し、水分を保持するために重要な線維である。近赤外線照射によりI 型、V 型コラーゲン、エラスチンの産生が促進されるため、美容皮膚科領域での皮膚の若返りに利用できる。2,18)

 

 

図4において、採取部が非露出部(大腿)の皮膚であるため、非照射対照群は、エラスチンはごくわずかであるが、近赤外線照射1ヶ月後の創傷治癒過程の炎症期では、エラスチンが著明に増加している。
そして、創傷治癒過程の成熟期に達しても、エラスチンは非照射対照群に比べて高い密度を維持していた

 

33歳男性の非露出部(大腿)の皮膚組織をVictoria Blue染色で染めた写真
エラスチンが青色に染色されている。
近赤外線のプラスの作用

 

 

3.筋肉の過剰収縮緩和作用

近赤外線によるしわ・たるみとりのメカニズムは、皮膚の即時的引き締め効果とコラーゲンの再合成促進効果のためとされているが21-25)、我々はさらに、しわがとれる要因として、皮下脂肪組織が少ない部位や表面を冷やして照射した場合、近赤外線が皮膚を透過して、筋層に達して、筋肉の過剰な収縮を緩和でき、しわになりにくくすることが可能であることを報告した。3,15)

 

図5は、眉間のしわと同部の筋肉痛を主訴に来院した57歳男性で、ボトックス注射か、手術が適応ですあるが、そのどちらも希望しなかったため、近赤外線を毎週、40Jで20発ずつ5回照射した。

 

これにより、過剰収縮して筋肉痛の原因となっている皺眉筋の収縮を長期にわたって緩和することができた。

 

図5

近赤外線のプラスの作用
近赤外線照射前後の正面視、上方視の臨床写真
眉間のしわの軽度改善を認めた。文献15)より引用

 

 

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出典元の論文・著書 田中 洋平(タナカ ヨウヘイ)先生